Interview

創業45周年特別インタビュー企画

伝統芸能の灯を未来へ繋ぐ

〜受け継がれる美の系譜〜

3人4脚で歩んだ日々を振り返って

第9回

3人4脚で歩んだ日々を振り返って

ひと言では難しいと思いますが、富十郎さんはどんな方でしたか?

悲しみを超えて家族が選んだ日々の歩み

 いま振り返ってみても、本当に明るくてネガティブなことは口にしないひとでした。嫌なことや思い悩むこともあったでしょうが、マイナスな言葉を聞いたことがないのです。入院しているときも弱音を吐くようなことはありませんでしたね。
 そういう姿を近くで見ていたので、何事も最後まできちんと向き合うことが大切だと身にしみて思いました。子どもたちが小さいうちに父親が亡くなるということは、もちろん淋しいし、悲しいことです。ですが、主人がいつも明るかったこともあって、あまりジメジメ暗くしてはいけないというのが、家族の中にはありました。

お子さんたちにとっては早いお別れでした。

そうですね。鷹之資が11歳、壱ろはが7歳のときでした。主人は鷹之資が14歳になったら本格的に歌舞伎や舞の指導をすると話していましたし、90歳くらいまでは生きるつもりだったと思います。でも、常識で考えれば、80歳の人が亡くなるのは特別なことではないですよね。順序からいけば自然なことであり、受け入れなければなりません。主人の性格からも、私たちがいつまでも悲しみに暮れているのは本意でないでしょうし、淋しさはあっても私たちは毎日を一生懸命に生きようとしていたと思います。

そんな中、鷹之資さんは舞台に立たれたんですね。

父親との早すぎる別れと子どもたちの試練

 鷹之資は主人と一緒に出演する予定だった舞台に立たなければならず、目の前の事に対処するだけで精一杯だったはずです。私もその手伝いをすることが多く、忙しくしていました。そんな状況でしたから、主人が亡くなって一番淋しい思いをしたのは、壱ろはだったと思うんです。大好きでいつもべったりとくっついていた父親がいなくなって、母親は兄のサポートでバタバタしている。壱ろはに淋しい思いをさせないよう努めましたが、それでもしばらくの間、笑わなくなってしまったんですね。中学校に入った頃、ようやくまた笑顔を見せるようになって、彼女なりに喪失感を乗り越えるのに少し時間がかかったのだと思います。
 家族4人だった頃の写真を見ると、本当に幸せオーラがいっぱいでした。そのような日常から、ある日、大黒柱が消えてしまい、そのことを受け入れるために必死にもがいていたのかもしれません。

お子さんたちをどうやって支えてこられましたか?

 私にしてあげられることはあまりなくて、ただ、主人の分も愛情を注ぐだけです。どの道に進むにしても、自分で切り開いていくしかありません。学習院では良い先生や友人、保護者の方と出会うことができて、色々と助けていただきました。
 生前、主人に将来子どもたちが生きて行く上で選択に悩んだり迷ったりしたとき、どうすればいいでしょうかと聞いたことがあるんです。そうしたら「本を読みなさい」との答えでした。主人が人生の指南書としていた『風姿花伝』は世阿弥が記した能の理論書で、演技論や芸術論が記されたものですが、哲学書のようにも捉えられます。人が一生の中で、歳を経るのにつれて自らがどう対応していくべきか、年齢に応じた稽古などについても書かれていて、若い人に芸を継承する考えは、子育てにも通用することが多く、参考になることがたくさん書かれているのです。『風姿花伝』は、読みやすく訳されたものもあり、子どもたちも読んでいるので、今では私たち家族の指南書になっています。
 また、主人は自分が素敵だと思う人の伝記をよく読んでいましたね。白洲次郎や山本五十六などが好きだったようです。とにかく本を読むことで、その中からヒントが得られるということをよく言っていました。

《出演のご案内》

【東京公演】 3月1日(土) ~23日(日)
 会場:THE ATER MILANO-Za
 玄武 ・・・中村鷹之資 
 詳細は公式サイトをご確認ください。
 https://japantheater.com/

 4月20日(日)
 会場:歌舞伎座 3階花篭ホール
 開始:15:00(開場14:30) 終了予定16:30
 エッセイスト関容子氏が今、会いたい人!
 伝統文化を支える一流ゲストとともに自在に語り尽くす珠玉のトークショーです。
 詳細は以下のサイトをご確認ください。
 https://www.tennoujiya.com/contact/

 5月18日(日)
 会場:国立文楽劇場
 《第2部》常磐津『羽衣』
 天女 ・・・芳澤壱ろは
 詳細は以下のサイトをご確認ください。
 https://www.tennoujiya.com

 6月21日(土) 11時開演/16時開演
 6月22日(日) 11時開演
 会場:京都芸術劇場 春秋座
 「小栗判官車街道」お駒 ・・・芳澤壱ろは
 長唄「新鷺娘」 ・・・芳澤壱ろは
 詳細は以下のサイトをご確認ください。
 https://www.tennoujiya.com

【東京公演】 2025年7月
 会場:新橋演舞場
【福岡・京都公演】 2025年8月
 会場:博多座・南座
 同田貫 正国・・・中村鷹之資  
 詳細は公式サイトをご確認ください。
 https://kabuki-toukenranbu.jp/

《書籍のご案内》


〜その愛につつまれて〜

渡邊 正恵(わたなべ まさえ)

1962年、栃木県生まれ。女優として活躍し、映画や舞台に出演。歌舞伎俳優で人間国宝の中村富十郎さんと新橋演舞場で行われた舞台『鬼平犯科帳』で共演したことがきっかけで、1996年に結婚。長男は歌舞伎俳優・中村鷹之資さん、長女は日本舞踊家・芳澤壱ろはさん。


《お知らせ》

『十三夜会』奨励賞を受賞しました

12月吉例顔見世興行において、
『十三夜会』令和6年12月月間賞の奨励賞を
いただきました!

直接お切符のお手配を承ります。

天王寺屋友の會
番頭:柏原 明子

電話:090-8841-1233
Mail:takaya@sound.ocn.ne.jp

続きは3月12日に配信予定