Interview

創業45周年特別インタビュー企画

伝統芸能の灯を未来へ繋ぐ

〜受け継がれる美の系譜〜

創業45周年特別インタビュー企画

第3回

見守ってくれている父に、母に感謝。

初舞台はいつでしたか?

生まれた直後から楽屋で過ごし、
三味線や鼓が子守歌がわりだったそうです

 子どもの頃は、父の楽屋で多くの時間を過ごしました。赤ちゃんの頃は楽屋の大きな座布団の上に寝かされ、歩けるようになってからも音楽やセリフが聞こえるところで遊んでいたそうです。父は家ではあまり芝居の話はしませんでしたが、楽屋で歌舞伎役者としての姿を見せることで、その心を自然に教えてくれていたのだと思います。
 初舞台は、1歳11カ月のときでした。もちろん、記憶にはないんですが、泣いて周りのみなさんにご迷惑をかけたようです。ただ、セリが上がったとたんにぴたっと泣きやんだそうです。かつらが重くないよう冠の形にしたり、衣装がきつくないよう軽い素材のドレスのようなものにしたり、父は幼い私が嫌がらないように一生懸命考えて工夫してくれていました。

 初代・中村鷹之資を名乗ったのは、6歳のときです。歌舞伎座で、牛若丸を演じました。屋号の「天王寺屋」は大阪四天王寺が由来で、四天王寺には鷹にまつわる言い伝えがあることと家紋が「鷹の羽八ツ矢車」であることから、父が名付けてくれました。

記憶に残っているお父様とのエピソードはありますか?

 世阿弥の『風姿花伝』に倣い、「14歳になったら本格的に芸を教える。それまでは子どもらしく、のびのびとやるのが大切」と話していた父は、私が11歳のときに亡くなったため、細かい芸の指導は受けていません。
 ただ、幼い頃から踊りの稽古はしていたので、10歳足らずのとき、父親と一緒に『五条橋』を踊ったことがありました。父は複数の流派の振り付けを取り入れていて、私が習っていたのは藤間の宗家の振り付けなので、同じ曲で踊っても違いがあるんです。当時、私は自分が正しく踊っているのにうまく合わなくて、すっかりたじろいでしまい、「舞台の上では臆したほうが負けなんだな」と感じた記憶があります。

ご自身の勉強会「翔之會」について、また特に思い入れのある演目について教えてください。

次回で十回目の節目を迎える「翔之會」
母と妹と3人4脚で歩んできた

 2013年の父の三回忌を機に、14歳のときに始めた勉強会が「翔之會」です。「100日の稽古より1日の本番」といわれるように、稽古はもちろん大事ですが、本番で得られる経験値は非常に大きく、その時々の年齢で勉強してきたことを披露する機会としてたいへん貴重なものとなっています。充電期間を設けたり、コロナ禍による中断があったりしたものの、次回で十回目という節目を迎えようとしています。
 演目は父の得意だった演目や、古典を中心に選んでいます。なかでも父が生涯にわたって演じた特別な作品である『船弁慶』を、2022年7月の「第七回 翔之會」で初めて勤めさせていただいたときは、感慨深いものがありました。その後、歌舞伎座では父の追善狂言として上演する機会をいただきました。父の公演に携わっていた方々に自分もまたお世話になり、父が使っていた衣裳や小道具を身に着けて演じていると、父にずっと守られ続けている感じがします。父の芸に対する謙虚で真摯な姿勢は受け継ぎたいですし、父が生涯をかけて試行錯誤してきた作品は自分も一生をかけて突き詰めていきたいです。

〜 十三回忌 五世中村富十郎を偲んで 〜
第八回 翔之會 ポスター
(令和5年10月開催)

妹さんやお母様とはどのような関係ですか?

 妹の愛子(壱ろは)とは、仲はよいほうだと思います。たまに洋服などを女性目線で選びたいとき、妹のセンスに頼ろうと、買い物に付き合ってもらったりもします。彼女は韓国ドラマが好きなので、おすすめの作品を聞くことや、ときには映画を一緒に見に行くこともあります。これは、ほかに行く相手がいないからですが(笑)。
 自分はネット系に疎いので、SNSについても使い慣れている人に聞くのが一番かと思い、妹からアドバイスをもらうことがあります。インスタグラムに何かアップしたいときに意見を聞いたり、「ハッシュタグをつけたほうがいいよ」と教えてもらったり。
 これまで自宅で仕事の話はあまりしませんでしたが、彼女が芝居もするようになり、仕事のことを話す機会が増えました。私が出ている舞台の見方も、だんだん変わってきているように感じます。お互いに褒めることはなく、けっこう辛口の感想や意見を言い合っていますが、ともに切磋琢磨していけたらと思っています。

母からは父の教えを間接的に聞くこともあり、改めて気づかされることもたくさんあります。父が亡くなった後は、母と妹と3人4脚のような感じで歩んできました。大変なこともあったかと思いますが、母が守ってくれたおかげで、すくすく育つことができました。おかげで、歌舞伎が嫌になったことは一度もありません。母に対しては、なかなか言葉では伝えられないのですが、本当に感謝の思いしかないですね。

「新春浅草歌舞伎」は絶賛上演中です。
1月は「浅草公会堂」へ!
観光とあわせて、ぜひご来場ください!

【公演日程】
2025年1月2日(木)~26日(日)

中村 鷹之資(なかむら たかのすけ)

本名・渡邊大。屋号は天王寺屋。1999年4月、東京都生まれ。人間国宝・五代目中村富十郎の長男。学習院大学経済学部卒。2001年、中村大を名乗り初舞台。05年、『鞍馬山誉鷹(くらまやまほまれのわかたか)』で初代中村鷹之資を披露。
1月2日から26日にかけて東京・浅草公会堂で上演される「新春浅草歌舞伎」には、中村橋之助、中村莟玉、中村玉太郎、市川染五郎、尾上左近、中村鶴松とともに出演する。

婦人画報(株式会社ハースト婦人画報社)
2025年2月号に掲載されました。
ぜひ、ご覧ください!

婦人画報

直接お切符のお手配を承ります。
ご来場の際には「お菓子」をプレゼント!

株式会社オフィスタカヤ
天王寺屋番頭:柏原 明子

電話:03-3536-3231
Mail:takaya@sound.ocn.ne.jp

続きは1月22日に配信予定