舞台に上がるときはどんな心持ちなのですか?
ハプニングは付きものですが、
とにかく堂々としていることです。
歌舞伎には、独特の掛け声を掛ける「大向う」とよばれる人がいます。「天王寺屋!」「まってました!」「日本一!」などの掛け声が入ることで、雰囲気が盛り上がり、舞台上と客席との一体感が生まれたりします。大向うの掛け声が入る「間」も含めて演じることもありますし、入らないとさみしく感じます。スポーツの試合中に観客席から応援が入ると、選手がより力を出せたりしますよね。それと同じように、掛け声によって私の場合はテンションが上がります。
大向うはコロナ禍以降、劇場ごとにルールが決められていますが、本来は誰がどこから声を掛けてもいいものなんです。たとえば、昔の映画館では、危険なシーンで座席のお客さんが「おい、危ないぞ!」などと叫ぶこともあったと聞きます。かつては歌舞伎も大衆娯楽として飲み食いしながら見られていて、役者がヘタな芝居をすると「引っ込めー」と野次を飛ばされたそうです。大向うも、もっと開けっ広げなものでした。
舞台ではわざとアドリブを交えて演じることもあれば、本当のハプニングもあります。「采配」という木の柄に総(ふさ)をつけた道具を「いけーっ」と言いながら振った瞬間に思い切り飛ばしてしまい、「お前は力加減がわからないのか!」と叱られたこともあります。
舞台裏の早拵え(はやごしらえ)のときに黒子さんがいないとか、持って出る予定の小道具が壊れてしまったとか、そんなときも何とかします。あるとき、役者たちが舞台袖にはけるための合図として使われるはずの提灯が見当たらず、仕方なく「提灯は○○で買えよ」とセリフを変えて演じました。

間違えても堂々としていれば、意外とわからないものです。逆に、正しくても自信なさげに演じていると、「あれ?」と思われてしまいます。舞台ではセリフを飛ばしてしまっても、絶対に芝居を止めてはいけません。先輩方からは「とにかく何でもいいからしゃべっていろ」とか、「わからなくなったら『兎にも角にも~』と言えば、誰かが拾うから」と言われています(笑)
普段の生活でお芝居のためにしていることはありますか
さまざまな情報をインプットして
自分の引き出しを増やしたいです
休日は、やはりドラマや映画を見ることが多いですね。映画は純粋に見たいのですが、やはり役者目線にはなってしまいます。これまでに見た映画の中でも『グレイテスト・ショーマン』は、ミュージカルの舞台的な雰囲気が伝わってきて、すごいなと感じました。特にバーのダンスシーンなどは格好よくて…つくづく名作だなと。
役者は、いろいろな引き出しを持っていなければいけません。その数が多いほど強いと思うので、増やす努力をしています。スーパー歌舞伎などの新作歌舞伎をつくっている先輩方も、たとえばディズニー映画にヒントを得ているものがあるそうです。さまざまなジャンルから情報をインプットして作品づくりに活かしていて、父も『ハリー・ポッター』シリーズを見て、「この衣装は使えるな」などと言っていたことがありました。役者には、常にアンテナを張って、ピッと反応したものに対して「あ、これは!」とひらめく感受性が必要かもしれませんね。

2023年は『刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)』や『極付(きわめつき)印度伝 マハーバーラタ戦記』『流白浪燦星(ルパン三世)』などの新作歌舞伎に、昨年は初めての現代劇『有頂天家族』にも出演させていただき、新たに興味をもっていただく機会が増えました。近年は、インスタグラムで公演の告知をしたり、インスタライブを行ったりもしています。SNSでの発信に対して、すぐに反応してくれたり、さらにXで拡散してくださったりするファンの方もいて、本当にありがたいです。ですから、SNSとうまく付き合っていくことも大事だと思いますし、それをきっかけに歌舞伎を身近に感じていただけたらうれしいです。

歌舞伎を見たことがない人には、堅苦しく思わず、いろいろ勉強したりする前に気軽に来てほしいですね。我々も新たな試みをしていますし、比較的リーズナブルな席もあります。きっかけは何でもよいので、どこか興味のある部分を見つけて、好きになってもらえたらと思います。

中村 鷹之資(なかむら たかのすけ)

徹子の部屋(テレビ朝日)
2025年1月8日(水)13:00〜
出演いたします。ぜひ、ご覧ください!

